設計の「共通言語」を知ってる? 標準数(JIS Z 8601)のお話

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設計の仕事をしていると、こんな場面に出くわすことがあります。

「このシャフト、Φ12.3mmにしたいんですけど。」

ちょっと待って。そのサイズ、本当に必要ですか?

そもそも、なぜ「標準数」が存在するのか

まず、こんなことを想像してみてください。

Φ5mmの軸に+5mmしてΦ10mmにしたとします。
これは「倍の太さ」になります。強度もガラッと変わる。めちゃくちゃインパクトがあります。

じゃあ、Φ50mmの軸に+5mmしてΦ55mmにしたら?
正直、ほとんど変わりません。誤差の範囲に近い感覚です。

つまり、サイズを「絶対値の差」で刻むのは合理的じゃないんですよね。
小さいサイズでは細かく、大きいサイズではざっくりと——それが人間の感覚にも、強度設計にも自然に合っています。

この「比率でサイズを刻む」という考え方を、賢い先人たちが数学を駆使してきちんと体系化してくれました。それが標準数です。

我々後の人間は、ありがたくその数値を使えばいい。
特注せず、世の中で売られているものがそのまま使える。
それだけで、コストが下がって、納期が短くなって、互換性が生まれます。

標準数とは何か(難しい話は抜き)

JIS Z 8601で規定されている標準数は、「世界共通のサイズのものさし」です。

軸径、板厚、ねじ、ベアリング、配管……。
これらが標準数に沿って作られているから、メーカーが違っても部品同士がかみ合います。
設計者が違っても、標準的な値をベースに話ができます。

設計の世界における「共通言語」だと思えばいいです。

梅・竹・松で選ぶ、3つのランク

標準数にはいくつかのランクがあります。実務では主に3つを使い分けます。

🌸 梅:R5(ケチケチ設計)

「種類を極限まで減らして、安く作る」ための数列です。

バリエーションを絞り込みたいとき専用。大型配管の系列などに向いています。
とにかくシンプルに。
在庫も管理コストも最小にしたい場面で活躍します。

| 1.00 | 1.60 | 2.50 | 4.00 | 6.30 |(以降×10倍)|

🎋 竹:R10(無難な設計)——基本はこれ!

世の中のスタンダードです。迷ったらR10を選べばいいです。

在庫を増やしすぎず、でも要望も満たせる、絶妙なバランスのラインです。
ほとんどの汎用機械・装置設計はR10ベースで設計されています。

| 1.00 | 1.25 | 1.60 | 2.00 | 2.50 | 3.15 | 4.00 | 5.00 | 6.30 | 8.00 |(以降×10倍)|

🌲 松:R20(こだわり設計)

「隙間なくピッタリのサイズを揃えたい」場面向けの選択です。

R10よりも細かくサイズが刻まれています。
精密機器や、サイズのバリエーションを細かく設定したい製品ラインナップに向いています。

| 1.00 | 1.12 | 1.25 | 1.40 | 1.60 | 1.80 | 2.00 | 2.24 | 2.50 | 2.80 | 3.15 | 3.55 | 4.00 | 4.50 | 5.00 | 5.60 | 6.30 | 7.10 | 8.00 | 9.00 |(以降×10倍)|

コストはかかります。
在庫も増えます。
でも、それに見合う精度やラインナップが必要な場面には最適です。

これが手引書。実務で使う流通サイズ一覧

ここからが本題です。「標準数の考え方はわかった、で実際に使う材料は何mm?」という話です。

板厚:鉄(SS400)

SS400は最も流通量の多い一般構造用鋼材です。
価格が安く、調達しやすい。実務でよく使う板厚は太字にしています。

板厚(mm)流通性
1.6
2.3
3.2
4.5
6.0
9.0
12.0
16.0
19.0
22.0
25.0
32.0

見てわかる通り、1.6、3.2、6.3(→6.0に丸め)、12.5(→12に丸め)とR10系列に近い値が多いです。
完全一致ではないですが、標準数の考え方が板厚設計の根っこにあることがわかります。

板厚:アルミ(A5052)

A5052はアルミ板の代表格です。
耐食性・溶接性に優れていて、装置設計でもよく使われます。

板厚(mm)流通性
0.5
0.8
1.0
1.2
1.5
2.0
2.5
3.0
4.0
5.0
6.0

板厚:ステンレス(SUS304 2B)

SUS304の2B仕上げ(冷間圧延)は薄板中心です。
6mm超は流通量が落ちるので注意が必要です。

板厚(mm)流通性
0.3
0.5
0.8
1.0
1.2
1.5
2.0
2.5
3.0
4.0
5.0
6.0

軸径(丸軸)

強度計算で求めた値を切り上げて、近い標準値を選ぶのが実務の流れです。
軸受との組み合わせが前提になるので、実質的にはJIS Z 8601(標準数)ベースで決まってきます。

R5R10(R5以外)R20(R10以外)
4
5
6
7
8
9
1011、1310.5、11.5、12、13.5
161817、19
2522、2821、24、26、30
4036、4532、38、42、48
6356、7150、60、67、75
10090、11080、95、105、120

実務ではR10の値から選ぶのが基本です。
ベアリングの内径はほぼこの系列に乗っているので、軸径もそれに合わせると部品選定がスムーズになります。

ねじ呼び径(メートルねじ・Mシリーズ)

ねじも標準数の考え方が背骨にあります。
一般的なボルト・ナットの呼び径はほぼR10系列です。

よく使う呼び径備考
M3小物の固定。締付けトルクに注意
M4電装・カバー類
M5汎用。もっともよく使います
M6構造用として安心できる最小
M8中型機械の主力
M10剛性が必要な箇所
M12重要な締結・フレーム構造
M16大型装置・重荷重
M20大型フレーム・基礎ボルト

M3、M4、M5、M6、M8、M10、M12、M16、M20……。
これもほぼR10系列です。M7やM9がなぜ存在しないか、これで納得できるかと思います。

まとめ:設計者がやることはシンプル

ランク別名こんなときに使う
R5種類を絞ってコスト優先。ざっくり設計
R10まず迷ったらここ。 世の中の標準
R20細かいサイズ設定が必要なこだわり設計

賢い先人たちが数学で「正解のものさし」を作ってくれています。設計者がやることは、それを知って、ちゃんと乗っかること。

「Φ12.3mm」を選びそうになったとき——少し立ち止まって、R10の近い値を使えないか考えてみてください。 たったそれだけで、調達コストが下がって、現場が喜んで、製品がシンプルになります。

標準数は、設計の「共通言語」です。まずその存在を知ることが、良い設計への第一歩になるようです。

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